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The Cove ③

では、この映画がぜんぜんまったくつまらなかったか? というと
ぜんぜん、そうではない。とても逆説的だけれど、
この映画を批判精神を持って見ることで、アメリカが常に他国に対して干渉してきた
(少なくとも圧力をかけてきた)パワーの源泉を見ることができる。
その点でとても面白い。

まず、太地町の中に、水銀問題を巡って複数の意見があることを利用している。
また、水産庁や地元の漁師さんたちの「がさつさ」「無表情さ」を
とりわけ強調するよう編集されている(ように見えた。)
日本人からすれば、ちょっと強そうな紀州弁である。
しかも、怒らしてるんだから、そりゃ怖い感じになる。

また、冒頭でネガ反転した、マグロの取引や工場地帯など、
「ちょっと無機質で異様な雰囲気の国、日本」というイメージ作りを怠らない。
のっけから、「で、出たー」と笑ってしまった。

さらに、イルカ漁の是非とよく考えると関係ない話まで持ち出して、
「涙を流してイルカをかわいそうに思うアメリカ人」「イルカを殺して恬として恥じない日本人」
というイメージづくりに腐心している。

イルカ漁が嫌いなのは自由だ。けれども、論理性よりもイメージだけで
対象を貶める手法は、ある意味民主主義の弱点をついた戦法だ。
事実、こうしたイメージによって思考を誘導する方法は、テレビCMだってなんだって
多用されているし、別にそれ自体は悪いことじゃない。

ゆえに、よきの市民であるためには、とにかく自分の目で見ていないことについて
無条件に情報を受け入れてはならない、という教訓をこの映画は与えてくれている。
ぼけっとみていると、
「えー、イルカかわいそう、日本人ちょー野蛮~」と思うツボになる。
一方で、漁獲高の管理の問題、水銀汚染の問題など、周辺の問題は、
制作者の意図がどうであれ、問題提起として真摯に考えたほうがましだと思う。

リックが、イルカの飼育が虐待的な側面を持つということには
大いに納得する。イルカは人間のおもちゃではない。
皮肉にも、太地町で生け捕りにされたイルカは世界中に売られて、
イルカショーに駆り出されている。需要があるということだ。
リックよ、どっちかというと、そっちの方が問題じゃないのかな?
動物を見世物にして喜んじゃうのは、あまり誉められたことではないかもしれない。
これに関しては、実際、多くの議論があるし、多くの問題がある。
(日本のペット業界は確かにずいぶんひどい商売をしているように見える)

一方で、今日のNHKクローズアップ現代にも出ていた漁師の皆さん。
需要や、国の施策の問題はいろいろある。
しかし、漁師さんにとっては生活の糧に過ぎない。
それは結論ありきで撮られたこの映画を見ても分かる。
イルカを追い込む洗練された技術。
いかに残酷だと言われようとも、いや例え残酷であったとしても
食うためにやっているという厳かな事実は覆らない。

漁師やあるいは猟師が、まったくの無感動に動物を獲っていることが
あるだろうか? その手を汚しているというリアリティーは圧倒的だ。
特に、網ではなく銛で漁をするイルカ漁ならなおのことだ。
もちろん、見てきたわけではないけれど、手を汚す人に、リアリティーが
あるのは、真理のような気がする。
すくなくとも大半の人は、血を一滴も浴びずに
肉を食っているのだ。血を浴びない享受するだけの連中が
何を言っても、全然説得力がない。
僕は、手を汚す人たちにだから最大限の敬意を表したい。

彼らの中で、イルカとはかわいらしい動物あり、同時に銛を受けて
うごめく肉のかたまりでもあるのだ。それら感覚が、同じ人に同時に
存在してはいけないのだろうか。
そして、そのこと自体をとやかく言う権利は、誰にもないはずだ。

日本人の多くが、イルカ漁自体の存在を知らなかっただろう。
しかし、それは日本が一枚岩であるという誤解に基づいている。
日本は無数の小藩に分かれていた、多様極まりない国なのだから、
正直、紀州のことは、あっしのような…何藩だろう。千葉藩?
の人間にはさっぱりわかりません。だから、江戸や京や大坂で
聞いたって、イルカ漁?まじで!知らなかったというのは当たり前である。

馬刺しや、猪鍋や、たぬき汁にとやかく言うのと一緒である。
自分で食うもんくらい、(絶滅しそうとか諸般の事情はあるとしても)
自分で決めますから。よその方にとやかく言われたくない。

リックがイルカ大好きなのはよーく分かったけれど、
自分の若い時の失敗を、外国の田舎町で必死こいて
とって真っ当に暮らしている漁師にぶつけないでいただきたい。
漁師は、ガキどもの学園祭ごっこのネタではない。

イルカの感情を思いやる豊かな想像力があるのなら、子供の遊びのせいで
生活をめちゃくちゃにされた漁師の気持ちを考えたまえ。

…結局、真面目に怒ってしまった。それこそ、大人げない。
どっとはらい
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プロフィール

清右衛門

Author:清右衛門
みちくさ部長。北鎌倉たからの庭にて、草木についてのほほんと語る教室をしてます。教室&ワークショップ、ツアーや活動の記録、お知らせや、日々の雑感など。

ほかにも、編集的雑用・野草を生かしたランドスケープデザイン・植物調査・公共サインデザイン・グラフィックも少々やってます。

生態学畑。園生の森、おゆみ野の森でボランティア。
いけばな尚真。たまに俳句。

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